乗りたくなったから乗った

乗りたくてウズウズ

東北地方太平洋沖地震の発生以降、とてもではないが自転車に乗るような気分じゃなかった。「福島第1原発事故による放射性物質の影響は(ほぼ)ない」と、理屈のうえでは理解していたので、外に出るのがイヤだったわけじゃない。ただひたすら、気力が失われていた。
そんな状態がしばらく続いたが、やがて「体を動かしたい」「自転車に乗りたい」という気持ちが、フツフツと湧いてきた。太もものあたりがウズウズする感覚。ウズウズウズウズする。走りたい。走りたい。走りたい──。
時間ができたこともあって、久しぶりにTREK2.1で出動した。実際にほぼ1ヶ月ぶりだったのだが、それよりはるかに長い時間が経っていたような気がする。地震は、時間の流れも大きく揺さぶった。

何も考えずに回しまくって後悔

漕ぎ出すと、何も考えていなかった。フォームも、ペース配分も、自転車のことも、まだ慣れていないはずのビンディングペダルのことも、何も考えていなかった。風と、光と、自分しかなかった。ただペダルを回した。
そして、回しすぎた(笑)。行きは弱い追い風だったので、実力以上に回せてしまった。当然、帰りは向かい風。しかも強まってる。さらにペース配分をまったく考えていなかったので、もうホントにしんどかった。風イヤもう……。
目的地はいつもの「スズメのお宿」だったのだが、オバサンAがひとりでたそがれていたので断念した。スズメの姿も見えなかったが、この時期は新しい命のために、せっせと励んでいるはずだ。オレは近くのベンチで休むことにした。

心に沁みる「何でもない光景」

犬が近付いてきた。長いリードを付けている。リードを持っているのはやたらと朗らかな笑顔のオバサンBだ。「チチチッ」と舌を鳴らして手を差し伸べると、犬はニコニコ笑いながら匂いを嗅ぐ。オバサンBはどこか満足げに、オレと犬を眺めている。
犬の興味は、すぐにスズメのお宿にいるオバサンAに移った。犬に引っ張られるようにして、オバサンBもそちらに行く。たそがれていたオバサンAは、「あら、来たの。そうなの。うん、そう」と目を細めながら、犬の頭を撫でまくる。オバサンBは「ごめんなさいね〜」と言いながら、やっぱり朗らかな笑顔で、全然申し訳なさそうじゃない。
やがてオバサンBも東屋に腰を下ろす。風に千切れて会話は切れ切れにしか聞こえないが、犬を話題にして、親しげな様子で話し込んでいるようだった。
何でもない光景が、ありふれているからこそ、胸に沁みる。
……これは3月25日の出来事だ。そして書いているのは、4月8日だ。2週間、書くことができなかった。その間、仕事の原稿やバイクのブログツイッターはいくつも書いたのに。本当に本当の自分の正直な気持ちとしては、何も書きたくなかったってことなんだろうな……。
桜はまだつぼみだったけど、今頃きっと満開だ。次に走りに行く時は、もう散っているだろう。そんなに急がなくてもいいのに。

今回のルート

入間川サイクリングロード・豊水橋〜スズメのお宿

今回の収穫

・ペース配分を考えるべき(往路平均26.8km/h、復路平均22.9km/h)。
・風は本当にしんどい。

Tm Dst Av Mx
1:44'46 43.13km 24.7km/h 39.7km/h

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